荒川水系 都幾川

mataza

2010年12月11日 23:07

今回も長文です。お付き合い下さいませ



荒川水系の一番の支流が入間川。

そしてその更に支流の、水質が良いのが

都幾川 ときがわ

ときがわ町(旧玉川村)
付近の都幾川

水生昆虫も
いまだ多数生息


































関東平野の区界

秩父盆地の山並みから

ときがわ町に連なる、山尾根林道

奥武蔵グリーンライン高篠・刈場坂峠付近が源流

都幾川水源の山


奥武蔵グリーンライン
刈場坂峠から

















この山々の木

かつての江戸八百八町の住宅を造る際に

伐採された木材を、谷まで運び

入間川(名栗川)・高麗川・越辺川・都幾川・槻川

を利用し、木材をイカダに組んで東京湾まで流しました。



江戸東京を中心として

西の方角から流れてくる材木の為西川材といいます。

荒川支流水源は、その西川材産地「西川林業地」である為

スギ・ヒノキ・サワラ等の

針葉樹が、いまだ沢山植わっています。

良く手入れされた木は

良質材木となり

二百年余りも日本の住宅で、重宝されて来ました。




ですが最近は、安い外国産材に押され

戦後に全国で植えられた針葉樹は、

今では見捨てられ、

手入れ・山師が皆無となり、

その為、大多数の材は良質材とはいえず、

使い道も無く、ただ山に植わっているのが現状。

数十年前に植えられた
針葉樹は
現在荒れ山となっています。


















全国どこでも目にする針葉樹

日本の針葉樹は98%人工的に植えられた木です。

その為、手入れをしないとバランスが保たれず、
過密林となり、やがて立ち枯れてしまいます。
枝打ちや間引き(間伐)
が行われないと
十分な光合成・養分が行き渡らず
このように立ち枯れてしまいます

























また針葉樹の葉は
その名の通り、針のような硬い葉で、
土に変わるまで非常に時間がかかり、

広葉樹山に比べ、水を溜める力が格段に下がります。

成長期には無残に植えられた針葉樹達が

大量に水を吸い上げ、沢の水を枯らせます。


その山の地表は栄養不足になり、

様々な植物の成長に多大な影響をもたらし、

針葉樹の主根は横へ広がらず、山肌は、むき出しになり、

いくら雨が降っても

地中へ水は浸透しづらくなり

洪水や土石流が多発します。

当然の如く花粉も多大に撒き散らされます。

今、日本で必要とされているのは
ダムで水源を確保する前に、山を創り返る事です。
生態系の整った山は、広大な湖のようなものであり、
山崩れ・集中豪雨などを防ぎ、何十年先も安全豊富な水を
与えてくれます。

この地域
砂利でパンパンになった
砂防ダムは
かつて鉄砲堰と呼ばれる
材木流し場跡が多い
















上画像の
砂防ダム建設前は
伝説の淵岩があり
村の人の憩いの場であったが

今は堰で埋まり無残な姿に・

ダムや堰は
簡単に自然を破壊します












人の手で無計画・無秩序に針葉樹が植えられた山は、低層植物だけでなく

動物の死活問題となり、広葉樹山の副産物である木の実をエサにしていた

クマ・サル・シカ・イノシシ等が、

生きていく為に、なりふり構わずに人間界に下りて来ます。

都幾川上流部
にもクマが出没




















栗、みかん、ジャガイモ、柿など人里には沢山食料があるので、
今では迷わず獣達が食べに来てしまいます・・



モヤシのように連立する
針葉樹の中で
元々あったであろう
広葉樹が頑張って成長

その木の下は低層植物である
シダ類がちゃんと生えています




















荒れた水源地域ですが、その水は清く、

都心に近い都幾川は、動植物も沢山います。


武蔵漁協の放流により
かろうじてアユが泳いでいます

黒い石にアユがいました

























昔に比べハヤ・ヤマベは少なくなりましたが
水生昆虫、
特に糸トンボが沢山います。
シマドジョウや藻エビ類、タナゴも生息

上流部は、渓流となり、水量こそ少ないですが
良型ヤマメ、沢にはイワナもいます






東秩父村~小川町から流れてきた
槻川が嵐山町で都幾川と合流


この付近から水量川幅も大くなり
一級河川らしくなります


川遊びに最適な河原は
シーズン中
家族連れ・バーベキュー
で賑います



















合流付近の森は
国の蝶でもある「オオムラサキ」
も生息しています

オオムラサキ

森に入ると
たまに見かけることがあります



 









東松山を抜け、その流れは関東平野・埼玉県中央部の用水

として、各用水堰から取水され、

やがて越辺川と合流。

  越辺川中山用水堰から
都幾川合流部付近を望む

自然形成されたワンドは
洪水時調整池となり
その川の流れを和らげます

何も無い湿地帯は、
人間が手を加えることもなく
人間のためになるのです











都幾川の上流にも、

大野ダム建設と言う、魔の手が忍び寄った時期がありました。

ですが埼玉県は、全国でも一早く、ダム建設を中止。

無駄になるであろう公共事業を、取りやめにした成功事例ですhttp://www.mlit.go.jp/river/dam/main/fullplan/031218.html←過去の記事(ただ予算が無くなった感もありますが)

おかげで現在も水質が保たれて、

首都圏で見なくなった生物も、都幾川では見ることが出来ます。





下画像の左端、河原で寝ている人が分かるでしょうか(笑)
この人は都幾川が好きで、千葉からはるばる昼寝に来たそうです
鞍掛橋と昼寝の人(笑)



















何気ない、日本のどこでもあるような都幾川です。

水量は昔に比べ少なくなりました。

かろうじて水質が保たれていますが、

人々の関心がなくなれば、小中河川環境はすぐに悪化します。

全国の山では、この地域のようなことが起こっています。


汚い川より、綺麗な川。

魚がいない川より、魚が沢山いる川。

水がマズイ川より、水が豊富で美味い川。

当たり前のことですね


フィールドは、すべての答えを教えてくれます







関連記事